シャンパンファイトってもったいない?銘柄の紹介、起源や意味も解説

シャンパンファイトってもったいない?銘柄の紹介、起源や意味も解説

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こんにちは。ワインノオト運営者で、現役ソムリエの「まさ」です。

スポーツ中継を見ていると、優勝が決まった瞬間に選手たちが喜びを爆発させ、勢いよくシャンパンをかけ合うシーンを目にしますよね。あのキラキラと輝く黄金色の飛沫(しぶき)と、選手たちの弾けるような笑顔を見ると、テレビの前の私たちまで幸せな気分になります。

でも、ふと冷静になったとき、「あのお酒、すごい高級品なんじゃないの?」「もったいなくない?」「そもそも誰が始めたの?」といった疑問が湧いてきませんか? また、日本ではプロ野球の優勝祝賀会などで「ビールかけ」がおなじみですが、なぜシャンパンではなくビールなのか、その違いや理由を詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。

実は、シャンパンファイトには半世紀以上の歴史があり、そこには計算された演出ではなく、あるレーサーの情熱と偶然が生んだドラマチックなストーリーが隠されています。さらに現代では、単なるお祝いの儀式を超えて、数十億円規模のお金が動く巨大なビジネスとしての側面や、環境問題・宗教的な配慮など、非常に複雑で興味深い背景があるのです。

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  • 日本ソムリエ協会認定の現役ソムリエ
  • 現役バーテンダーでもあるお酒のプロ
  • 家飲みでいかにワインをおいしく楽しむか探求中
  • 夫婦そろってソムリエなので、記事情報の正確さには自信あり

この記事では、そんなシャンパンファイトに関するあらゆる疑問を、ソムリエならではの視点と、ちょっとしたトリビアを交えて徹底的に解説します。これを読めば、次の優勝シーンを見たときに「あ、今のボトルの持ち方はプロだな」とか「今回はノンアルコールなんだな」といった、通な楽しみ方ができるようになりますよ。

記事のポイント
  • シャンパンファイトが始まった意外なきっかけと歴史的背景
  • 日本独自の文化であるビールかけが生まれた理由とその違い
  • F1で使用される高級シャンパンの銘柄や驚きの価格
  • 現代における環境への配慮や未成年・宗教上の対応ルール

記事の後半では、自宅でシャンパンファイト気分(?)を味わうための、ソムリエおすすめの楽しみ方もご紹介しますので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。

ワインを開けてからどれくらいまでおいしく飲めるのか気になる方は、» ワイン開封後の賞味期限は?1ヶ月後や1年後も飲めるのかプロが解説の記事を参考にしてみてください。

\スポーツはフェッラーリで乾杯/

目次

シャンパンファイトの意味と起源!銘柄や値段・ビールかけとの違い

シャンパンファイトの意味と起源!銘柄や値段・ビールかけとの違い
画像:ワインノオト・イメージ
  • シャンパンファイトの歴史や意味と正しい方法
  • F1でシャンパンをかけるのはどういう意味?
  • ル・マンで生まれた起源と背景
  • なぜ勝者は美酒を浴びるのか
  • 正しいやり方とゴーグルの準備
  • ビールかけとシャンパンファイトの違い
  • 日本の野球がビールかけである理由

シャンパンファイトの歴史や意味と正しい方法

シャンパンファイトの歴史や意味と正しい方法
画像:ワインノオト・イメージ

勝利の瞬間に泡を浴びるあの光景は、理屈抜きにしてカッコいいものです。しかし、なぜ人は喜びのあまりお酒を浴びるようになったのでしょうか。ここでは、単なるお祭り騒ぎに見えるシャンパンファイトが、いつどこで始まり、どのような変遷を経て世界中に広まったのかを解説します。歴史を知ることで、あの儀式がより感動的なものに見えてくるはずです。

F1でシャンパンをかけるのはどういう意味?

F1でシャンパンをかけるのはどういう意味?
画像:ワインノオト・イメージ

F1グランプリの表彰台でシャンパンをかけ合う行為、いわゆる「シャンパンファイト(Champagne Fight)」には、単なる「優勝のお祝い」という枠を超えた、ドライバーたちにとっての切実で深い意味が込められています。

極限状態からの解放とカタルシス

F1ドライバーは、時速300kmを超えるスピードで、常に死と隣り合わせの極限状態の中を2時間近く走り続けます。強烈なG(重力加速度)、コクピット内の猛烈な暑さ、そして一瞬の判断ミスも許されない精神的なプレッシャー。レース中の彼らは、常人には想像もつかないほどのストレスに晒されています。

チェッカーフラッグを受け、表彰台に立った瞬間、その全ての重圧から解放されます。シャンパンファイトは、その溜まりに溜まった緊張を一気に解き放つ「カタルシスの爆発」なのです。ボトルの栓を抜き、勢いよく中身を噴射させる行為は、彼らの内側で張り詰めていた感情が外へと溢れ出す様子そのものを象徴していると言えるでしょう。

チームスポーツとしての感謝の表現

また、F1はドライバー一人の力では勝てません。完璧なマシンを作り上げたエンジニア、数秒でタイヤ交換を行うメカニック、戦略を立てるチーム監督など、数百人のスタッフの努力の結晶が勝利です。表彰台から眼下のチームクルーたちに向けてシャンパンを浴びせる行為は、「お前たちのおかげだ!」「俺たちがやったんだ!」という、言葉にならない感謝と連帯感の表現でもあります。

勝者が敗者を見下ろして優越感に浸るためのものではなく、共に戦った仲間たちと、苦難や達成感を全身で共有するための神聖な儀式。それがシャンパンファイトの本質なんですね。英語圏では「Champagne Spray(シャンパン・スプレー)」「Champagne Shower(シャンパン・シャワー)」と呼ばれ、成功者が浴びるべき「祝福の雨」として認知されています。

ル・マンで生まれた起源と背景

ル・マンで生まれた起源と背景
画像:ワインノオト・イメージ

今でこそF1の代名詞のようになっているシャンパンファイトですが、その発祥の地はF1グランプリではなく、フランスで行われる世界三大レースの一つ、「ル・マン24時間レース」であることをご存知でしょうか。

1967年、伝説の「ダン・ガーニー」

世界的に認知されているシャンパンファイトの起源は、1967年のル・マン24時間レースに特定されます。この年、自動車業界では「フォード vs フェラーリ」の激しい覇権争いが繰り広げられていました。イタリアの絶対王者フェラーリの牙城を崩すべく、アメリカのフォード・モーターが威信をかけて送り込んだのが「フォードGT40 Mk IV」です。

ステアリングを握ったのは、アメリカ人ドライバーのダン・ガーニー(Dan Gurney)とA.J.フォイト(A.J. Foyt)のコンビ。彼らは見事に過酷な24時間を走り抜き、アメリカ車として、そしてオール・アメリカン・ドライバーとして初の総合優勝という歴史的快挙を成し遂げました。

計算外の「ファイヤーホース」

表彰台に立ったダン・ガーニーの足元には、伝統的に優勝者に贈られるモエ・エ・シャンドン(Moët & Chandon)のマグナムボトルが置かれていました。ガーニーがふと下を見下ろすと、そこにはチームオーナーのキャロル・シェルビーや、ヘンリー・フォード2世、そして彼らの妻たちが立っていました。

ガーニーは後のインタビューで、その時の心境を「長時間の激闘の末の勝利に、何か特別なことが必要だと感じた。ただ普通に飲むだけでは足りない気がしたんだ」と語っています。彼は衝動的にボトルを手に取ると、激しく振り始めました。そしてコルクを抜くやいなや、飲む代わりに親指でボトルの口を半分押さえ、まるで「消防ホース(fire hose)」のように勢いよくシャンパンを噴射させたのです。

周囲にいたフォード社長や夫人たち、カメラマンは予期せぬシャンパンのシャワーにずぶ濡れになりましたが、誰一人として怒る者はおらず、むしろその場の興奮と喜びは最高潮に達しました。この瞬間、静的だった表彰式が、動的でエモーショナルなエンターテインメントへと変貌を遂げたのです。

実は前年に「予行演習」があった?

この歴史的瞬間の前年、1966年のル・マンでも似たような出来事がありました。クラス優勝したジョー・シフェールに贈られたシャンパンボトルが、直射日光とエンジンの熱で内圧が高まり、コルクが自然に「ポンッ!」と飛び出して中身が噴きこぼれてしまったのです。

これは単なる事故でしたが、ガーニーはこの光景を目撃しており、翌年の意図的なアクションのヒントになったと言われています。つまり、「偶然の事故」と「意図的な演出」が連続して起きたことで、現在の伝統が確立されたというわけです。

なぜ勝者は美酒を浴びるのか

なぜ勝者は美酒を浴びるのか
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ここで素朴な疑問が湧きます。なぜ水やスポーツドリンクではなく、高価なシャンパン(美酒)を浴びるのでしょうか。もちろん「スポンサーが提供しているから」という大人の事情もありますが、文化的な背景も見逃せません。

シャンパン=「ハレの日」の象徴

フランスのシャンパーニュ地方で造られるスパークリングワイン「シャンパン」は、古くから王室の戴冠式や船の進水式など、重要なお祝い事(ハレの日)に欠かせない飲み物として扱われてきました。キリスト教文化圏において、ワインは「キリストの血」であり、泡立つワインは生命の喜びや祝福を象徴する特別な存在です。

本来、シャンパンは美しいグラスに注ぎ、その繊細な泡立ち(ペルラージュ)と芳醇な香りを楽しみながら、優雅に味わうものです。ソムリエの私からすれば、3リットルもの高級シャンパンを地面に撒き散らすなんて、正気の沙汰とは思えません(笑)。

最大の贅沢と「無礼講」

しかし、本来は「高貴で味わうべきもの」であるシャンパンを、あえて「浴びる」という行為に転化することに意味があります。それは、日常のルールやマナー、経済的な観念から完全に解放された、究極の贅沢であり、勝利者だけに許された特権だからです。

私が働くホテルのレストランでも、お客様がお祝いの席でシャンパンを抜くときは、皆様本当に特別な笑顔をされています。しかし、それを頭から被ることはできません。スポーツの勝者がシャンパンを浴びる姿は、私たちが日常では絶対にできない「無礼講の極み」を代行してくれているからこそ、見ていてこれほどまでにスカッとするのかもしれませんね。

正しいやり方とゴーグルの準備

正しいやり方とゴーグルの準備
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シャンパンファイトは、ただ闇雲にボトルを振り回せばいいというものではありません。見栄え良く、かつ安全に行うための「作法」とも言えるテクニックが存在します。もし将来、あなたが何かの大会で優勝してシャンパンファイトをする機会があったら(!)、ぜひ参考にしてください。

プロが実践するスプレーテクニック

F1ドライバーたちの動きをよく観察してみてください。彼らはまず、コルクを抜く前にボトルを激しくシェイクします。これによりボトル内の炭酸ガスの圧力を限界まで高めます。

そしてコルクを抜いた瞬間、すぐに親指でボトルの口を半分から3分の2ほど強く押さえます。こうすることで、出口が狭くなり、中の液体が勢いよく、遠くまで直線的に飛ぶようになります。これを専門用語(?)では「サム・テクニック(Thumb Technique)」と呼ぶとか呼ばないとか。

口を全開にしてしまうと、ただダラダラと足元にこぼれるだけで、美しいアーチを描くことはできません。また、ボトルを両手で持ち、腰を入れて体全体で撒くのもポイントです。

必需品となった「シャンパンゴーグル」

そして近年、シャンパンファイトに欠かせないアイテムとなっているのが「ゴーグル」です。シャンパンはアルコール度数が12%前後あり、さらに炭酸ガスと糖分を含んでいます。これが目に入ると、強烈な痛み(Stinging)を伴い、しばらく目が開けられなくなります。せっかくの勝利の記念撮影で、目が真っ赤に充血して泣き顔のようになってしまっては台無しですよね。

さらに危険なのがコルクです。シャンパンのコルクは時速40km〜50kmで飛び出すとも言われており、万が一目に直撃すれば失明の危険すらあります。そのため、NBAやMLBのロッカールームでの祝勝会では、選手たちは事前にスキー用や水泳用のゴーグルを装着してスタンバイするのが常識となっています。

最近では、マイアミ・ヒートの選手たちがオークリー(Oakley)のゴーグルを着用したり、優勝記念のデザインが施された特注ゴーグルが登場したりと、単なる防護具ではなく、勝利者のファッションアイテムとしての地位も確立しています。「ゴーグルを首にかける=チャンピオンの証」という新しい記号が生まれているのですね。

注意

ご自宅でスパークリングワインを開ける際は、絶対に人の顔や照明器具に向けてコルクを飛ばさないでください。ガス圧は想像以上に強力です。布巾を被せて静かに抜くのがスマートな大人のマナーです。

ビールかけとシャンパンファイトの違い

ビールかけとシャンパンファイトの違い
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日本のスポーツニュース、特にプロ野球の優勝シーンでおなじみなのは「シャンパンファイト」ではなく「ビールかけ」ですよね。どちらもお酒をかけ合うという点では同じですが、そのスタイルには明確な違いがあります。

中身と場所の違い

最大の違いはもちろん「中身」です。欧米がシャンパン(スパークリングワイン)であるのに対し、日本はビールを使用します。

そしてもう一つ重要なのが「場所」です。欧米のシャンパンファイトは、F1の表彰台やサッカーのフィールド上など、主に「屋外」で行われます。一方、日本のビールかけは、試合終了後に宿舎やホテルの宴会場へ移動し、「屋内」で行われることが一般的です。

準備と「養生」のプロ意識

屋内で行う日本のビールかけには、凄まじい準備が必要です。ホテルの宴会場の絨毯や壁紙にビールが染み込むと、匂いが取れなくなり大変な損害となってしまいます。そのため、会場の床にはビニールシートが何重にも敷き詰められ、壁も天井近くまで厳重に保護されます。これを業界用語で「養生(ようじょう)」と言います。

私が以前勤務していたホテルでも、宴会場でのイベント時には養生を徹底していましたが、ビールかけのレベルは別格です。数千本のビールが撒かれるわけですから、まさにプールのような状態になります。この「会場を汚さないように徹底的に準備をしてから、思いっきり汚す」というスタイルは、ある意味で非常に日本的な、几帳面さと無礼講が同居した文化だと言えるかもしれません。

日本の野球がビールかけである理由

日本の野球がビールかけである理由
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では、なぜ日本野球界ではカッコいいシャンパンではなく、ビールが定着したのでしょうか。そのルーツを探ると、1959年(昭和34年)の南海ホークス(現在の福岡ソフトバンクホークスの前身)の祝勝会に行き着きます。

カールトン半田の「アメリカ流」

当時、日本のスポーツ界には優勝時に酒をかけ合うという習慣はありませんでした。静かに乾杯するか、酒樽の鏡割りをする程度だったそうです。

そんな中、ハワイ生まれの日系二世選手であり、マイナーリーグでのプレー経験もあったカールトン半田(日本名:半田春夫)選手が、チームの優勝祝賀会で立ち上がりました。彼は「アメリカでは優勝したらこうやって祝うんだぜ!」と叫びながら、エースピッチャーだった杉浦忠投手の頭にビールをかけたのです。

最初は驚いた杉浦投手や周囲の選手たちでしたが、杉浦投手がビールをかけ返したことでスイッチが入り、会場は大混乱の「ビール合戦」へと発展しました。これが、日本におけるビールかけの起源とされています。

なぜシャンパンではなくビールだったのか?

カールトン半田選手がアメリカで見ていたのは、おそらくシャンパンファイトだったはずです。しかし、1959年当時の日本において、フランス産の真正シャンパンは宝石のような超高級品であり、一般市場ではほとんど流通していませんでした。

一方で、ビールは高度経済成長期の入り口において、大衆的なアルコール飲料として普及し始めていました。チーム全員でかけ合うために必要な数百本、数千本という単位を調達するには、物理的にも予算的にもビールしか選択肢がなかったのです。

また、ビールの方が泡立ちが良く、量も多い(中瓶で500ml)ため、「かけ合う」という行為においてはシャンパン以上に盛り上がる要素を持っていたとも言えます。こうして、アメリカの儀式が日本の経済事情に合わせてローカライズ(現地化)され、日本独自の「組織的な無礼講」としてのビールかけ文化が根付いたのです。

シャンパンファイトの銘柄や値段と現代の配慮

シャンパンファイトの銘柄や値段と現代の配慮
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  • F1を彩る歴代の銘柄たち
  • あの巨大ボトルはいくらするのか
  • もったいないという批判と環境対策
  • 炭酸水やノンアルコールでの代用
  • まとめ:シャンパンファイトの気分を自宅で味わう

華やかに見えるシャンパンファイトですが、使用されるお酒の銘柄や値段は時代とともに変化しています。また、SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれる現代においては、環境への配慮や多様性への対応も避けては通れないテーマです。

ここでは、知っておくと誰かに話したくなる、シャンパンファイトの「今」について、経済的・社会的な側面から深掘りします。

F1を彩る歴代の銘柄たち

F1を彩る歴代の銘柄たち
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F1の表彰台で使用されるシャンパンは、その時代の最高級ブランドやマーケティング戦略を映し出す鏡のような存在です。F1公式シャンパンのサプライヤーになることは、世界中の富裕層にブランドをアピールできる絶好の機会だからです。

フランスの名門からイタリアの挑戦者へ

長年、F1の象徴として君臨していたのは、やはり本場フランスのシャンパンメゾンでした。1960年代から90年代にかけては「モエ・エ・シャンドン(Moët & Chandon)」が、2000年代のミハエル・シューマッハ全盛期には、赤いリボンが特徴の「マム(G.H. Mumm)」が採用され、「F1の勝利=フランスのシャンパン」というイメージが定着していました。

しかし、2021年に大きな転換期が訪れます。F1史上初めて、フランス産シャンパンではなく、イタリア産のスパークリングワイン「フェラーリ・トレント(Ferrari Trento)」が公式パートナーに選ばれたのです。 「え? フェラーリってあの赤い車の?」と思うかもしれませんが、実は全く別の会社です。

しかし、同じイタリアの情熱と高級感を共有するブランドとして、F1の世界観に見事にマッチしました。シャンパン(フランス・シャンパーニュ地方産)という厳格な定義よりも、グローバルなブランド戦略が優先された瞬間でした。

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LVMHの巨額契約による復帰

そして最新のニュースによると、2025年からは再びLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループが、10年間で約10億ドル(約1,500億円!)とも噂される巨額の契約でF1のグローバルパートナーに復帰することが発表されました。

これにより、再びモエ・エ・シャンドンなどのLVMH傘下のブランドが表彰台に戻ってくる可能性があります。F1というスポーツがいかに巨大なビジネスの場であるかがわかりますね。

あの巨大ボトルはいくらするのか

あの巨大ボトルはいくらするのか
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表彰台でドライバーが抱えているあの巨大なボトル、一体いくらするのか気になりますよね。酒屋で見かける通常サイズ(750ml)とは明らかに大きさが違います。

» ソムリエ直伝!ワインのボトルサイズの疑問を全解決で選ぶ楽しさアップの記事では、ワインのボトルサイズについて深堀りしていますので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

「ジェロボアム」という特別なサイズ

表彰台で使用されるボトルは、通常「ジェロボアム(Jeroboam)」と呼ばれる3リットルサイズです。これは通常のボトルのちょうど4倍の容量にあたります。

片手で軽々と持っているように見えますが、中身と瓶の重さを合わせると5kg以上にもなり、レースで疲弊した腕で振り回すのは実は結構大変なんです。

1本45万円!? 驚愕の価格設定

その価格ですが、使用される銘柄によって大きく異なります。特に話題になったのが、2017年から数年間使用されていた「シャンパン・カーボン(Champagne Carbon)」というブランドです。このボトルは、F1マシンと同じカーボンファイバー(炭素繊維)で職人が一本一本手作業でラッピングしており、中身も最高級のヴィンテージシャンパンでした。

その価格は、なんと1本(ジェロボアムサイズ)で約3,000ドル(当時のレートで約30万〜40万円)と言われていました。表彰台には3人のドライバーと優勝チームの代表が上がるので、合計4本。つまり、たった数分の儀式で100万円以上が泡となって消えていた計算になります。まさに「夢の世界」ですね。

現在のフェラーリ・トレントのジェロボアムサイズは、カーボンほどではありませんが、それでも一般市場価格で数万円〜十万円程度はする高級品です。

もったいないという批判と環境対策

もったいないという批判と環境対策
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一方で、「食べ物や飲み物を粗末にするのはもったいない」「環境に悪いのではないか」という批判的な視点も無視できません。特に日本人の私たちには「もったいない精神」が根付いているため、大量のお酒が床に捨てられる光景に抵抗感を覚える方もいるでしょう。

排水問題と「仙台ルール」

実際、大量のアルコールや糖分を含んだ排水をそのまま下水道や河川に流すことは、水質汚染につながり、環境負荷が非常に高い行為です。そのため、現代のスポーツイベント運営では、厳しいルールと対策が講じられています。

たとえば、日本のプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地である仙台市では、下水道条例の水質基準が非常に厳格に定められています。そのため、球団がビールかけを行う際は、発生した大量のビール汚水をそのまま排水溝に流すことは絶対に許されません。

そこでどうしているかというと、事前に専用の「バキュームカー(汲み取り車)」を手配し、床に溜まったビールを全て吸引・回収した上で、産業廃棄物として適切に処理するという手法がとられています。これをファンの間では「仙台ルール」と呼んだりします。

また、アメリカのスタジアムでも、使用後の排水は浄化槽で処理されるなど、見えないところで多額のコスト(清掃費用だけで数百万円かかることも!)をかけて環境対策が行われています。ただのどんちゃん騒ぎに見えて、裏では大人の事情と努力が詰まっているのですね。

炭酸水やノンアルコールでの代用

炭酸水やノンアルコールでの代用
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F1や国際大会が真にグローバル化する過程で、シャンパンファイトという「西洋的・キリスト教的・アルコール中心的」な儀式は、現地の文化や法律との摩擦を生むこととなりました。これに対する解決策として、柔軟な運用ルールが確立されています。

イスラム圏での「ローズウォーター」

中東のバーレーン、アブダビ、サウジアラビアなどで開催されるF1グランプリでは、イスラム教の戒律によりアルコールの摂取および公の場での使用が厳禁とされています。

そのため、これらの国での表彰台では、アルコールの代わりに「ワー(Waard)」と呼ばれるローズウォーター(バラのエキスが入った炭酸水や果汁飲料)が使用されます。ボトルの見た目はスポンサーのロゴが入っていてシャンパンそっくりですが、中身はノンアルコールです。

これならイスラム教徒のドライバーも安心して参加できますし、現地の観客の感情を逆撫ですることもありません。

未成年選手への配慮と「高橋宏斗選手の涙(?)」

また、国によって異なる「飲酒可能年齢」も壁となります。特にアメリカは厳しく、飲酒は21歳からと定められています。

記憶に新しいのが、2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝後のシャンパンファイトです。日本代表の最年少メンバーだった高橋宏斗投手は、当時20歳(日本では成人ですが、米国の法律では未成年)。

彼はシャンパンファイトへの参加を断念せざるを得ませんでした。先輩たちが歓喜の美酒を浴びる中、彼はゴーグルまで準備していたにもかかわらず、一人寂しく水を飲んでその場を過ごしたそうです。

最近では、未成年選手がいる場合はノンアルコールのスパークリングジュースを用意するケースも増えていますが、法律遵守は絶対条件。こうしたエピソードも、スポーツの舞台裏を知る面白さの一つですね。

まとめ:シャンパンファイトの気分を自宅で味わう

ここまでシャンパンファイトの奥深い世界をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。歴史を知り、値段を知り、裏話を知ると、テレビで見るあのシーンがより一層味わい深いものになりますよね。「あ、今の選手、ちゃんと親指で押さえてるな」なんて見方ができれば、あなたも立派な通です。

家飲みで「勝者のワイン」を楽しむ

さて、推しのチームや選手が勝ったとき、私たちも何か特別なことをしたくなりませんか? さすがに自宅のリビングでシャンパンファイトをするわけにはいきません(後の掃除と奥様の雷が怖すぎます…)。

そこでおすすめしたいのが、「勝者と同じ銘柄のワイン」を用意して、優勝決定の瞬間に抜栓し、グラスで優雅に乾杯するというスタイルです。

現在F1で使用されている「フェラーリ・トレント(Ferrari Trento)」は、実は日本国内のワインショップやネット通販でも比較的手に入りやすく、スタンダードなボトルなら3,000円〜4,000円台から購入可能です。シャンパン(フランス産)に引けを取らない高品質なスパークリングワインでありながら、手の届く価格帯なのが嬉しいポイントです。

次のレースや重要な試合の日は、ぜひ冷蔵庫にこの「勝利のワイン」を冷やしておいてください。そして勝利の瞬間、テレビの向こうの選手たちと心を一つにしてコルクを抜き、立ち昇る泡と香りを楽しみながら祝杯をあげましょう。それが、私たちファンに許された、最高のシャンパンファイト(家飲みVer.)なのです。

蒸し暑い日本の夏では、すぐシャンパンもぬるくなります。シャンパンに氷を入れてもいいの?と疑問の方は、» ワインに氷はダメ?マナー違反?ヨーロッパとの違いもソムリエが解説の記事をぜひ参考にしてみてください。

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F1®とLVMHのパートナーシップについて

2025年からのF1とLVMHの歴史的なグローバルパートナーシップ契約に関する詳細は、Formula 1の公式サイトで発表されています。興味のある方はチェックしてみてください。
(出典:Formula 1 and LVMH announce historic 10-year Global Partnership

\LVMHのF1シャンパンはこちら/

*20歳未満の飲酒は禁止されています

シャンパンファイトってもったいない?銘柄の紹介、起源や意味も解説

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